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現代の都市を中心とする生活圏には、下水道、水道、ガス、電力、通信等のライフラインがあり、その多くは地中に管渠として埋設されている。これらの管渠の埋設には、地上から掘削してその底面に既設の管を配管し埋戻す開削工法、セグメントを組立てるシールド工法と既設の管を地中に圧入する推進工法がある。
この中で、推進工法は、計画管渠路線の両端に発進立坑と到達立坑を設け、推進設備を備えた発進立坑から油圧ジャッキにより掘進機を地中に圧入し、掘進機の後続に既成の推進工法用管を順次継ぎ足し、管列を推進することで掘進機を到達させ、発進立坑と到達立坑の間に管渠を構築するものである。推進工法は開削工法に比べ路面を開削することが少なくなるため、工事中の路面使用面積の減少、騒音、振動、粉じん等の建設公害の低減、交通や市民生活への影響の低減等、都市環境対策に優れている。
推進工法の歴史に関して、19世紀末にアメリカ北大西洋鉄道下でコンクリート管が推進工法で埋設されたという文献がある。また、20世紀初頭の第1次世界大戦中にヨーロッパ戦線、日露戦争等で坑道戦に用いられた記録がある。
初期の推進工法は、ガス、水道、通信ケーブル等のさや管を、軌道、水路、道路等を横断して埋設するための特殊な工法であったが、徐々に道路横断方向の管の埋設にも使用されるようになり、下水道事業でも多く活用されるようになった。
さらに、需要の拡大に伴いシールド工法等の技術を取り入れ安全性の高い工法へと進展し、泥水式推進工法が開発され、現在の密閉型推進工法が確立された。また、大都市から地方中小都市へ、あるいは幹線から準幹線や枝線へと下水道整備事業の拡大に伴い、社会的要求に応じた多種多様な小口径管推進工法も開発されている。
現在は、都市土木の一翼を担う工法として確固たる地位を築いており、長距離施工や複数の曲線区間を含む急曲線施工の実績を急速に増やしている。また、これらを確実に施工するために、掘進機器や計測・制御機械の開発、自動化の進め、下水道を初めとするライフラインの整備に大きく寄与している。


●主な管路の敷設工法
管路を地中に敷設する工法は、開削工法と非開削工法に区分される。開削工法は、管路を敷設する位置に沿って、道路上から溝状に敷設する深さまで掘削し、管を敷設した後、その上部を良質土や発生改良土により埋戻し、道路を復旧する手法である。一方、非開削工法は、道路上に設けた立坑(堅穴)から掘進機を投入し、管路を敷設する位置とその範囲のみの地山を掘削し、掘削土砂を排除しながらその空間に管を圧入し管路を構築する手法である。この非開削工法には、掘進機(シールドマシン)内で屈伸にあわせセグメントで管体を形成するシールド工法と敷設管を立坑から圧入し、その圧力で掘進する推進工法がある。
推進工法の定義
推進工法は、「発進・到達立坑間において工場で製造された推進工法用管の先端に推進機・先導体を取付け、ジャッキ推進力によって管を地中に圧入して管路を構築する工法である」と定義される。
1.推進工法と開削工法の比較
(1)推進工法長所
① 工事期間中、道路上を使用する範囲が立坑部分のみであるため、交通障害は少ない。
②掘削する範囲が限定されるため、掘削土量、発生土処分量が少ない。
③土留め材の設置、撤去、土砂の掘削量が少ないため、建設重機の稼働による騒音、振動等の建設公害が軽減される。
④管路の埋設位置が深いため、地上からの掘削が不経済となる場合
⑤市街地等の周辺環境や道路私用許可条件から、地上からの掘削が適さない場合
⑥軌道または河川を横断するため、地上からの掘削が困難な場合
⑦市街地等の周辺環境や道路私用許可条件から、地上からの掘削が適さない場合
2. 推進工法の分類
推進工法は、呼び径800以上3000以下の大中口径管推進工法、呼び径700以下の小口径管推進
呼び径3000を超えるものとして超大口径管推進工法が開発されている。
さらに推進工法を活用する工法として、パイプルーフ工法やシャトルモール工法がある。
3. アンクルモール工法の概要
アンクルモール工法は、切羽と隔壁間のカッタチャンバ内を泥水で満たし、切羽面に作用する土圧および水圧に見合う圧力に、泥水の圧力を均衡させることにより切羽の安定を図り、カッタヘッドで掘削しながら立坑に設けた元押ジャッキの推進力により推進工法管を地中に圧入して管路を構築する工法である。
掘削土は泥水と混合して排泥水として郊外に流体輸送され、排泥水は坑外に設けた泥水処理設備により土砂と泥水に分離される。泥水は送泥水、排泥水の管路系統は循環回路になっている。
アンクルモール工法は、カッタチャンバ内に泥水を充満させ、その圧力により切羽に作用する地山の土圧と地下水位に対抗させ、地山の崩壊を防ぐ。カッタで掘削された土砂は、カッタチャンバ内で泥水と混合され、後続の管内に設置された排泥管を通じ流体輸送され、坑外に搬出される。
4. アンクルモール工法のシステム構成は、下図に示すように・立坑・支圧壁・推進台・元押ジャッキ・押輪・ストラット・押角・推進工法用管・推進機からなっており、長距離施工の場合は必要に応じて中押し装置(呼び径1000以上)が設置される。

5.
適用管種: コンクリート管・鋳鉄管・塩化ビニル管など
適用管径: 200mm=3500mm
6. 適用土質
本工法の適用土質は下記の通りである。
(1)粘性土(火山灰質粘性土・有機質土・粘性土・シルト)
(2)砂質土(砂質土・砂)
(3)礫質土(礫質土・礫)
(4)粗石(粗石まじり砂・粗石まじり礫)
(5)巨石(巨石まじり砂・巨石まじり礫)
(6)岩盤(軟岩・中軟岩・硬岩)
etc.

7. アンクルモール工法の長所
(1)長所
・泥水という流体で掘削と排土が循環回路としてシステム化されているため、遠隔集中操作が可能となることから掘進中、推進管内に作業員が立ち入る必要がなく、長距離施工においても作業員の安全性が確保される。
・偏芯破砕機構を採用しているので幅広い土質に対応できる。
・RSG(Reflective Steering Guidance)※を搭載しているので、高い施工精度がある(下図参照)
・さまざまな管種に対応
・送排泥ラインに還流ポンプが組み込まれており、その回転数を制御することにより圧力調整が可能であることから、高水圧や地下水圧の変化が激しい地盤においても切羽の安定を確実に制御することができる。
・管路距離が長くなった場合でも、送排泥ラインに中継ポンプを組み込むことで長距離輸送が可能となり、長距離施工に適している。
・掘削された土砂は一次処理機により土砂と泥水に分離され、分離された土砂は一般残土、泥水は循環泥水として再利用されるため、産業廃棄物発生量を低減させることができる。
・管周装置を併用することで長距離施工が可能
・カーブ施工にも対応
・施工スピードが早く、工期を短くすることができるので経済的である。
※RSG(Reflective Steering Guidance)

アンクルモール前部のミラーに当たり反射したレーザーを方向制御スクリーンに投射してアンクルモール先頭部の姿勢位置と推進計画線のずれを示す仕組みである。レーザースポットを方向制御スクリーンの中心に合わせることで、アンクルモールを初めて使うオペレーターでも高い施工精度の確保が容易にできる。図のケースではアンクルモールの位置姿勢が下向きになっているため、掘進機の先頭部を上に上げる必要がある。




元押し写真
1.高耐荷力管推進工法
高耐荷力管推進工法は、管軸方向強度の大きい高耐荷力管(鉄筋コンクリート管、ダグタイル鋳鉄管、強化プラスチック複合管など)を使用する。掘進に伴う抵抗力は、掘進機が受ける先端抵抗力と菅列外周面が周辺地山から受ける周面(摩擦)抵抗力があるが、これに対抗する推進力は、すべて発進側の元押しジャッキにより管後端部に負荷される。
2.低耐荷力管推進工法
低耐荷力管推進工法は、管軸方向強度が小さい硬質塩化ビニル管などを使用する。そのため、掘進に伴う抵抗力のうち、掘進機が受ける先端抵抗力に対しては、元押しジャッキから推進力伝達ロッドを介し、直接、掘進機に推進力を伝達し対抗させ、管列が地山から受ける周面(摩擦)抵抗力に対してのみ、推進工法用管を介して推進力を伝達させる。このように、抵抗力を先端抵抗力に分散することで、軸方向耐荷力の比較的に小さい硬質塩化ビニル管を掘進敷設することができる。
3.3 鋼製管推進工法
鋼製管推進工法は、鋼管をさや管として用いて本管を敷設する鋼製さや管推進工法と地上または地上付近から鋼製さや管を本管まで掘進し硬質塩化ビニル管を本管に接続する取付管推進工法に分類される。
パイプルーフ工法は、鋼製管推進工法を応用したもので、本体構造物の構築に先立って、鋼管を本体外周に沿って連続的に掘進し、鋼管内にセメント系グラウト材を充填することで鋼管による防護屋根や壁を構築して掘削時の地山の緩みを最小限に抑え地下空間などを構築する工法。




アンクルモール工法は開発から50年経ち、2500台以上の販売し世界各地で様々なインフラ構築で貢献してきました。
長年にわたる経験と技術開発により安定した施工スピード・施工精度を確保、長距離推進・カーブ推進・さまざまな土質に対応できるマシンをユーザーのニーズに応えながら技術進化し、安全性も遠隔操作により管内作業を最小限にすることで作業員への危険・負担を減らし世界各地で正確・早く・安全な技術で発展に寄与してきました。この先、先進国における地下に設置される次世代通信網や老朽化した下水道管などの置き換え工事、新興国においては下水道の敷設などの初期インフラ構築などにも利用されます。
新しい時代にも、世界の発展に安全かつ早く価値ある貢献ができるよう日々進化し続けます。